2020年、ロボットタクシーは街を走るのか。心理障壁を超え人を動かすブランディングの役割

ロボットタクシー 石坂・藤永・竹尾

DeNA Creators Interview!今回お話をお伺いするのは、株式会社ZMPとの合弁会社で開発中の「ロボットタクシー」に携わる、DeNA デザイン戦略室クリエイティブディレクターの石坂昌也さん、アートディレクターの藤永忠男さん、デザイナーの竹尾太一郎さんです。
自動運転技術を活用した新しい交通サービス「ロボットタクシー」を2020年に提供することを目標として、ブランド作りやクリエイティブ制作に携わってきた3人。新しいサービスに携わるやりがいや難しさ、今後の課題についてお話していただきました。

Interviewee Profiles

石坂 昌也(Ishizaka Masaya)

デザイン戦略室 クリエイティブディレクター
2015年にDeNAに中途入社。ロボットタクシーのブランドデザインとクリエイティブディレクションを担当。

藤永 忠男(Fujinaga Tadao)

デザイン戦略室 アートディレクター/デザイナー
2012にDeNAに年中途入社。ロボットタクシーの立ち上げ時期のデザインとアートディレクションを担当。

竹尾 太一郎 (Takeo Taichiro)

デザイン戦略室 デザイナー
2015年にDeNAに中途入社。ロボットタクシーのラッピングや広報素材の制作を担当。

Robot Taxi(ロボットタクシー)とは

robottaxi

ロボットタクシーは、DeNAとZMPによる自動運転技術を活用した新しい交通サービスです。東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年の実用化を目指しています。
ロボットタクシー

自動運転車と人が寄り添う安全な社会をめざし、サービス展開のきっかけをデザインでつくる。

はじめてロボットタクシーの仕事を任されたとき、どのような印象を持ちましたか?

藤永さん: “ロボットタクシー”と聞いて、名前から事業内容はなんとなくイメージできたのですが、まさかDeNAが自動車関係の事業に参入するとは思っていなかったので、少し驚きました。ロボットタクシーの事業がはじまったばかりの頃は、まだ石坂さんと竹尾さんが入社していなかったので、僕ひとりでブランディングやクリエイティブの制作を担当していました。

ロボットタクシーのロゴは藤永さんが制作されたと伺いましたが、何故現在のカタチになったのでしょうか。

藤永さん: シンプルで親しみやすく、展開しやすいロゴを目指して制作しました。シンボルロゴは「Robot Taxi」の頭文字である「R」を使用しています。「R」の横に並んだラインは横断歩道をモチーフにして、車と道路と人を導いてくれるような未来の安全を表現しています。横断歩道はグローバルデザインなので、世界中の人に認識してもらいやすいと思ったんですよね。また、縦線が4本なのは、自動運転レベルが1〜4段階あることも表しています。
カラー選定に関してですが、それぞれのカラーには意味がありブルーは「信頼」レッドは「情熱」グリーンは「安全」イエローは「活性化」ブラックは「信念」となっています。

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この一つのロゴに、様々な意味やストーリーが込められているんですね。

藤永さん: ブランドの方向性決めやロゴの制作を行い、サービスを展開していくためのベースが整った段階で、入社したばかりの石坂さんと竹尾さんふたりに引き継ぎ、僕はロボットタクシーの担当から離れました。ちょうど、ロボットタクシーの1号車が完成したタイミングでしたね。
2号車目からはラッピングも石坂さんと竹尾さんで制作することになりました。

石坂さんと竹尾さんは、何故ロボットタクシーの事業に携わることになったのですか。

石坂さん: 僕はロボットタクシーのリリースを見た時から興味を持っていて、ロボットタクシーに携わりたいと考えていました。今まで国内外の広告代理店や制作会社でクリエイティブディレクターとして仕事をしていたのですが、事業会社でサービスに携わり、クリエイティブの世界を広げることに挑戦してみたいと思っていました。

竹尾さん: 僕の場合は、入社するまでロボットタクシーのことを全然知らなくて、入社後に石坂さんに声をかけられたタイミングで知ったんですよね。はじめて聞いたときは「本当に自動運転事業なんてできるの?」と半信半疑でいました。ですが、目標にしていた公開日の時期がくると普通に走っていて、それを見た瞬間、世の中にまだない新しいサービスを作ることに、ロマンを感じました。

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石坂さんと竹尾さんが携わってから、ロボットタクシーはどのような展開を見せたのでしょうか。

石坂さん: 僕たちが携わる前は、様々な方々に手伝っていただいていたプロジェクトでしたので、まずはすべての仕事の状態の把握や整理をするところからはじめました。
数ヶ月後に神奈川県藤沢市で実証実験を行うという目標があったので、それまでにやるべきことはなんだろうと仕事を洗い出した結果、まずはブランドイメージに大きく関わるロボットタクシーのラッピングを、目的に合ったかたちでデザインし直すことにしました。同時に表にはあまり出ないグッズなども作り好印象を作り出せるように心がけました。
1号車は車体に大きくロゴが貼られているようなデザインだったのですが、車の機能やコンセプト、かたちに合わせたものにつくり直そうと、方向性を再検討しました。
また、ロボットタクシーは“完全無人運転で怖い”といったマイナスイメージを持つ人がいるかもしれないという懸念点もありました。だからこそ、正しくブランドを作り、安全で便利なサービスを表現することを目指したのです。

竹尾さん: 例えば、安全性や機能性や親近感を強調するために、キャラクターを作って親しみを持たせ、マイナスなイメージを払拭しよう……というアイデアがありました。そのアイデアを現実しようと進行していた時期は、毎週新しいキャラクターをデザインしては提案していましたね。
郊外にお住まいのお年寄りの方も、ロボットタクシーにかわいいキャラクターがプリントされていれば、喜んで触れてくれるのではないかと思ったんです。

自動運転は怖くない。
心理的障壁を超え、世界に必要とされるサービスへ。

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結果的に現在使われているロボットタクシーのパッケージが選ばれた理由は、なんだったのでしょうか。

石坂さん: 毎週新しいデザインのディスカッションやプレゼンテーションをするなかで見えてきたのですが、結局わたしたちが提供するのは「完全無人」「運転席に誰も乗っていない」「ドアが自動的に開いて人が乗れる」自動運転技術を活用したサービスです。このサービスそのものを活かして何かできないかと考え直した結果、無機質な印象のあるサービス本体からアイコニックな一面を探りだし、ユーザーが一番触れる「車の扉」をサービスの象徴にしようというコンセプトを作りました。

「開く扉」「乗る扉」「未来の扉」に色を塗ることで、サービスイメージとしました。色をブルーにした理由は、ロゴの色のなかでブルーが1番平静な色だからです。ドア以外の面すべてに色を塗ってしまうと、面積が広いのでどうしてもうるさくなってしまいますし、1号車は少し装飾的でカラフルな印象だったので、あえて一色に絞ってテーマカラーとして使いました。
一方、シンボルロゴは今まで通りカラフルなものを使っています。大きな面積で使うときだけは、一色で統一しているんです。

ロボットタクシーの仕事に携わるうえで特に意識したことや気をつけたことはありますか。

石坂さん: ロボット系の事業全てにおいていえるのですが、人が「怖い」と思う新しいものへの感情障壁を、どうやった取り除けるのかは常に意識しています。日本人は理解があるほうだと思うのですが、新しいものに対する恐れも感じる傾向があります。ロボットタクシーが怖いものではないことを、まず知ってもらうことが今後世界展開するためにも重要だと考えています。
今、ロボットタクシーが技術的に完全に完成したとしても、運転手がいない状態で一般道路を法律で走れないことになっています。それが変わるには世論に受け入れられないといけません。人々がロボットタクシーを好意的に見て、ロボットタクシーが道路を走るようになることを求め、一方で意見してもらわないと、日本や世界の法律は変わらず、街をロボットタクシーが走ることはできません。

竹尾さん: ベンチャー企業の事業として自動運転サービスを行うことは、どうしても怖がられやすいと思います。なので「確かなもの」であるということを技術的にはもちろん、事業全体の印象として感じられるものを作らなくてはならないと思っています。なので、安心できるブランドづくりをしていかなきゃいけないと思っています。

石坂さん: 世の中で最も美しいもの・安いもの・機能的なものが必ずしも支持や人気を集めるわけではありません。ブランドの価値を高めることで、時に心理的な障壁を超えてしまうことが出来るので、クリエイティブやブランディングを通して、ファンをつくる逆転の手札として使っていく必要があると思っています。

今後、ロボットタクシーをどのようなサービスに育てていきたいと思いますか。

石坂さん: ブランディングは美しくかっこいいイメージを持たせることだけが役割ではなく、サービスを守るような機能としてもはたらきます。自動運転サービスを見て「思っていたよりもかわいい」といった感想をもらったり、乗るためだけに遊びにきてもらったり、最近リリースした「ロボットシャトル」「ロボネコヤマト」を通して、少しずつ新たな良いイメージ作りが出来はじめています。いつか世論を動かすことができるような心理的な価値づくりを行い、ブランディングやクリエイティブ制作を通して事業に貢献できたらと思っています。

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石坂さん、藤永さん、竹尾さんお話ありがとうございました!