「UI/UXデザインの楽しさを学生に伝えたい」DeNAのデザイナーが全国の美大生に会いに行く。
others

「UI/UXデザインの楽しさを
学生に伝えたい」
DeNAのデザイナーが
全国の美大生に会いに行く。

眞崎 達也 Interview

DeNA Creators Interview!今回お話をお伺いしたのは、DeNA デザイン戦略室 グループリーダー兼UXデザイナーの眞崎達也さんです。
DeNAに9年勤めている眞崎さんは、入社当初はモバゲーのディレクター兼デザイナーとして、他社さんとのタイアップの企画や、ゲームやWEBページのディレクションとデザインを行っていたそうです。現在は、UXデザインや組織のマネジメント、採用などを任されていますが、採用活動を通して組織のある課題に気づき、最近新しい取り組みを始めました。その活動はどのような価値を生み出し、業界を変えるのか。お話を伺いました。

Interviewee Profiles

眞崎 達也 (Tatsuya Mazaki)

デザイン戦略室 第二グループリーダー / UIデザイナー。第二グループは、IPPF事業、オートモーティブ事業、一部ゲーム事業等に携わるデザイナー、フロントエンドエンジニアが所属するグループ。眞崎さんは、メンバーの事業へのアサインと調整、体制構築、社外とのリレーション、新卒の育成、新卒採用活動など、主に組織の作りを担当している。

「UI/UXデザイナー」を知らない?
いないなら育てる
業界の底上げをしたい。

最近、DeNAのデザイナー陣が全国の美術系大学や高校を回っているそうですね。なぜ、このような取り組みを始めたのでしょうか。

眞崎さん: きっかけは、母集団形成ができていないという課題感からでした。DeNAのデザイン戦略室は、数年前からデザイナーの新卒採用を始めたのですが、最初は応募が少なくて。
 
初めて金沢でデザイナー志望の学生向けに採用イベントを行った時、学生が10人も集まらなくて、現実を知ったんです。“今までのやり方ではダメだ、変えないといけない”と思って、継続して学生に会いに行こうと思いました。
すぐに採用に結びつけるつもりはなくて、まずは「会社を知ってもらうこと」「デザイナーのキャリアパスを提案すること」「今需要が高まっているUI/UXデザイナーの仕事を知ってもらうこと」に、力を入れました。
様々な美大を回っていて気付いたのですが、「UIデザイナー」「UXデザイナー」という職業自体、知らない学生が多いんですよね。

UI/UXデザイナーは今後もっと求められるであろう職業なのに、圧倒的に数が少なくて、業界で限られた数のクリエイターを取り合っている状態です。僕たちがこの活動を通して、UI/UXデザイナーの仕事を広めることによって、母数が増えて、業界の底上げができると思いました。
いずれはヒットサービスを生み出し続ける、スタープレイヤーを誕生させたいと思っています。
今では、自動車業界など他の業界もUI/UXデザイナーを募集しているので、将来的にIT企業以外でも活躍できる場が増えていると思います。
 
ただ、そういった情報も美大の学生、特に地方にはなかなか入ってこないようで、いろんな企業がUI/UXデザイナーの仕事や取り組みを発信するようになれば、変わってくるのではないかと思っています。

早いうちに仕事のことを知ってもらうことで、学生生活や就活が有意義に過ごせると思うんですよね。デザインで食べていくための方法を知ることで、決意や自信が生まれるのではないかと思います。

眞崎さんの普段、UI/UXデザインのお仕事をされていると思うのですが、なぜ現在の活動を担当しているのでしょうか?

眞崎さん: もともと、採用担当だったわけじゃないんですよ。ただ、他社の採用状況と自社の採用状況を比べて、これは行かないとだめだと思ったんです。僕が動いたら、その流れでこのプロジェクトを任されるようになっていて(笑)。僕以外のデザイナーやエンジニアを連れて、全国の学校を回ることになりました。
 
これはDeNAの文化だと思いますね。やり始めた人が責任を持って進行するっていう、誰がやってもいいんですけどね。
最近は「一緒に大学に行きたい」とデザイン戦略室のメンバーや、DeNAGamesのデザイナーから声をかけてもらえるようになりました。

人事ではなく、現場で働くデザイナーが参加することで、どのような違いがありましたか?

眞崎さん:
大きく変わったことは、人事主導の場合は情報を伝えるかたちでの会社説明会になるため、学生は集まりにくいのですが、デザイナー主導の場合はデザインの授業やキャリア相談のように、デザイナーとしての学びを双方向に交換できるため、非常に多くの学生が参加してくれます。その光景を見た瞬間に確信しましたね。採用目的だけで行っても、学生たちと密にコミュニケーションをとるのは難しいだろうな、と。
  
現場で働くデザイナーが参加すれば、実務や作品作り、デザインの話ができて打ち解けやすいようです。デザイナー同士のほうが気持ちがわかりあえるのかもしれないですね。ポートフォリオを見せてくれた学生に対して、直接作品やポートフォリオのアドバイスもできますし、社内のデザイナーのキャリアも様々なので、いろんな視点でアドバイスができます。

大学・高校で行った講義・ワークショップ・座談会の様子。


▲京都造形芸術大学|座談会の様子


▲大阪芸術大学|ポートフォリオアドバイス会


▲東北生活文化大学高等学校 美術科|講義


▲東北生活文化大学高等学校 美術科|座談会



▲東京造形大学|ワークショップ


▲京都精華大学 セイカハッカソン|審査員  

UI/UXデザイナーを
将来の選択肢のひとつに。

さまざまな学校に訪問して、学生向けにどのような授業を行っているのでしょうか。

眞崎さん: 学校によってニーズが全然違うので、行く場所に合わせてプランニングしています。
こちらが行くときに大事にしているのは、学校が何を教えているのか、その学校にいる学生が何を考えているのか、何を強みにしているのかを知ることと、生徒一人一人とコミュニケーションをとることです。
行動調査をした上で、企業として学校や学生に何ができるのか見つけたいんです。

学生からウケがいいのは「ラウンドテーブル」形式の交流会ですね。こちらが一方的にお話する授業だと、学生一人一人との距離をなかなか縮めることができないのですが、ラウンドテーブルは5〜8名1組の学生たちの中に、DeNAのクリエイターが1名入り、15分ずつ交流して、時間になったらDeNAのクリエイターが移動して交流する……を繰り返します。学生一人一人の声を聞くことができて、お互い質問しあえてラフにコミュニケーションがとれるので、緊張感なく本音が話せると思います。
 
学生さんに「人事部の人は会社の良いところしか話さない」という意見をもらったときは、だいぶ同じ目線で話ができてると感じました(笑)。

学生たちと交流してみて、IT企業やDeNAにどのようなイメージを持っていましたか?

眞崎さん: 怖がっていましたね。自分たちが行く企業・業界ではない、働き方がハードなイメージだそうで……(笑)。うちなんて、残業は少なく時間内にパフォーマンスを出す人が多い企業なのに、かつてのWEB業界のイメージがあるようです。時間内にパフォーマンスを出すことの別のハードさはありますけど(笑)。
DeNAは残念ながら現時点では認知度が低くて……事業やサービスでいうと、マンガボックスや野球チームのことは知ってくれていましたね。
この活動は学校のなかで知名度を上げることにも、意味がありますね(笑)。

なぜ、UI/UXデザイナーという仕事は知られてないのでしょうか。

眞崎さん:
学校の環境にもよりますが、専門の授業を取り入れてる学校が少ないことや、社会人と比べて使うものがあきらかに違うのも原因ですかね。
UI/UXデザインの仕事について話すと、そこまで興味を強く持ってもらえるわけではないのですが、サービスの利用者数(自分の作ったデザインに触れてもらえる人数)を話すと食いつく子が多かったです。アプリだと数百万ダウンロード、数千万ダウンロードの世界ですからね。

デザイナーの仕事と聞くと、自動車や日用雑貨などを手がけるプロダクトデザイナーや、ポスターや雑誌広告のデザインをするグラフィックデザイナーのイメージが、まだまだ強いみたいです。

別にDeNAじゃなくてもいいので、UI/UXデザインが学べるスクールやインターンには、積極的に参加してもらえたらと思っています。とりあえず飛び込んでみてほしいんです。1回インターンに参加するだけで、UI/UXデザインの面白さや難しさを体感できると思うので。

UI/UXを楽しさを伝えていきたい。

いろんな学校を回る上で、絶対に伝えようと思っていることは何ですか。

眞崎さん: 「UI/UXデザイン」とは何か?わかってもらうのは大前提としてありますね。学生のうちに興味があれば動き出してもらいたいんです。いま興味をもっている人が一割しかいなくても、それが今後半分になるだけで、相当なインパクトがあると思うんですよ。そもそも“作ること”に興味のある美大生が、好きになってくれると嬉しいんですよね。

デザイナーを一番創出しているのが美大なはずなのに、美大からUI/UXデザイナーになっている人がとても少なくて、どちらかというと総合大出身で独学で勉強した人がUI/UXデザイナーになることが多いです。もともとセンスがある人やツールを使いこなせる人、デザインを作ってきた人がUI/UXデザインを学べば、成長も圧倒的に早いと思います。

中途採用市場を見ていると、美大出身で一度紙のグラフィックで仕事していた人が、デジタルの仕事にどんどん向いてきている流れはありますね。

現状どのくらい、地方の学校を回っているんですか。

眞崎さん: 東京はもちろんのこと
金沢
京都
大阪
仙台
名古屋
福岡
……には、すでに行っていますし、今後も行く予定があります。
北海道やその他の美大がある地方にも行きたいですね。そして、できれば訪れたタイミングで、その地方で仕事が体験できる1Dayインターンやデザインイベントを行いたいです。
あと、決してうちだけで学生を囲い込みたいということは考えてません。
UI/UXデザイナーやIT業界が何をしてるのか知って興味を持って欲しいので、他社とも組んで各企業の魅力を伝えられないかと思ってます。  

学生さんたちからどんな質問をされることが多いですか?

眞崎さん:
「何時間働いてるんですか?」
「給料はどのくらいもらえるんですか?」
「土日何してるんですか?」
「1日どんな働き方をしているんですか?」
「若手はどんな仕事ができるんですか?」
「キャラクターデザインできるようになるまで、何年くらいかかるんですか?」
「デザインで食べていけるんですか?」

上記のような質問をされることが多いです。まだ働くイメージがついていない学生が多いのかもしれません。

最後に、参加しているクリエイター自身が、この活動を通して得ているものはありますか?

眞崎さん: 学生って仕事とかではなく「作ることが好きだ」という、まっすぐな思いだけで作品を作っているじゃないですか。僕はその姿を見て、学生時代を思い出して自主制作をはじめたり、制作グッズを揃えることが増えています。
なんなんですかね、あの希望に満ち溢れた感じ。
いま、デジタルネイティブじゃないですか。学生たちの新しいものに取り組む姿勢は、見ていて面白いです。教えているこちらもパワーをもらっています。
 
あとは、DeNAのクリエイター数名が、毎回いろんな学校に行って自分のキャリアについて振り返って、整理して、資料にして話すので、今の自分は何をしたいのか、今後どうなるべきかを考える機会になるんですよね。それによって、今足りてないところをどのように伸ばすべきか気付けるんです。
それを一人じゃなくて、数人がやることも面白いんですよね。一緒に働いている仲間の人生ってそんなに知る機会がないので、プレゼン資料から相手の人生のなかの挫折や自信をつかんだ瞬間、実績を知ることで、改めて尊敬できることがあるんですよね。
「この人の仕事がいつもすごいのは、こういう背景があったからか……」って。
  
また、企業の採用に関わる立場で見ていて、各学校の教育方針や授業内容、学生のポテンシャルを知ったことで、デジタル系の作品が少ないことによる書類審査のデメリットがあったのではないかと、採用に対する考え方にも変化は出てきています。

今後はそんな才能を見つけて、育てて、業界の力になるクリエイターを創出していきたいです。

この活動を通して、少しでもUI/UXに興味を持つ学生が増えると良いですね!お話ありがとうございました!

デザイナー志望者向け、サマーインターン開催!

2017年の夏は福岡・大阪・京都・名古屋・東京の全国5都市で「DeNA 2017 SUMMER INTERNSHIP(UI/UXデザイナーコースのみ)」を開催予定です:)
東京の企業が、地方でデザイン領域のインターンシップを開催することはなかなか少ないので、ぜひこの機会に、まだUI/UXデザインの魅力がわからないという学生さんも、一度エントリーしていただけると嬉しいです。
1Dayインターンなので、楽しんでUI/UXデザインに触れることができると思います。
 
▶︎[エントリー・概要はこちらから]