デザインイベント「UI Crunch」チーム力を成長させた企画提案の3ヶ月間を振り返る
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デザインイベント「UI Crunch」チーム力を成長させた企画提案の3ヶ月間を振り返る

2020年12月17日に、株式会社GoodpatchとDeNAが共同で運営してきたデザインイベント『UI Crunch』が開催されました。第15回目となる今回は、大きくリブランディングをしての開催です。リブランディングには、Goodpatchさん、DeNAの新卒を中心とするメンバーがアサインされ、完全オンラインという状況の中で進行していきました。

この記事では、そのプロセスをなぞりながらイベント制作にあたっての気づきや工夫したポイントをまとめていきます。詳しい内容は、noteに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

『UI Crunch』について

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『UI Crunch』は、2014年にスタートした勉強会・コミュニティで、10,000人を超えるメンバー(connpassのコミュニティメンバー)に支えられて運営をしています。
過去には、「UI Crunch #13 娯楽のUI - by Nintendo -」や、「UI Crunch Special Edition – デザインと経営を繋ぐ「デザイン経営」宣言」などを開催しました。お届けしたいテーマに合わせて登壇者の方にスピーチをしていただき、参加者の皆さんの新しい発見や学びにつなげることで、まだ光の当たらないUIデザイン業界をもっと盛り上げたいと考えてきました。

しかし昨今では、UIデザインというカテゴリが世の中に浸透してきたことから、「UI業界に光を当てる」というイベントの存在意義も含めてリブランディングをする運びとなりました。

1ヶ月目:
チーム力をどう生み出していくか?

イベント企画にあたっては、まずオリエンテーションを受けたあと、Goodpatchさんチーム・DeNAチームに分かれてそれぞれ進めていくことになりました。
DeNAチームでは、どう進めるか考えた結果、他イベントやインサイトのリサーチをする「調査チーム」とイベントのアイデアを考える「企画チーム」に分かれて進めていくことになりました。

(1)同じゴールに向かうために、まず歩調を揃える

始動してしばらくは、チームとしてのパワーを発揮することができていませんでした。そもそも初対面かつオンラインなので関係値が構築しづらいこと。さらに、「リブランディングをする」という大きなオーダーに対して、どう向かうべきかあやふやな状態でチームを分けたため、連携がうまくいきませんでした。

変に遠慮し合ってしまい、議論も進まないうえにタスクやボールも曖昧…。この状況を解決するため、まず雑談会・ランチ会を数回開催して関係を温めていきました。

また、チームがきちんと歩めるように、全員でブレストをしながらタスク整理を行いました。必要なこと、それを誰がするか、話し合う過程で少しずつお互いが意見を出し合えるようになってきました。ゴールはまだ見えないながらも、工夫を重ねてなんとか全員で進みはじめることができました。

オフラインでは日常的なコミュニケーションを通して信頼の積み重ねができていたのかもしれませんが、オンラインでは積極的かつ明確に時間を設けてコミュニケーションをとる必要があると感じました。

(2)「とんでもない企画」をみんなで出し合うために

お互いにまだ探り探りだったこともあってか、初期に出てきたアイデアはどれも行儀の良いものばかり。新卒ならではの新鮮な視点を期待されている中で、なかなか面白いアイデアが出ずに苦戦していました。
そこで先輩の藤永さんから教えていただいたのが、「ムーンショット」という考え方です。端的に言うと、誰もがワクワクするような壮大な目標を立てて考えることです。

私たちはまずオリエンテーションで話に上がった「ジョナサン・アイブ(アップルの元CDO)を呼ぶレベルのイベントになる」という目標を引用して考えてみました。すると、見逃していた選択肢に気づきはじめました。

「そもそもゲストは日本人に限らなくて良いよね」「世界的な企業を呼べたら最高だね」など、理想を広げて考えてみると、これまでの姿に囚われない新しいイベントの姿も見えてきます。

もちろん綿密なリサーチから企画を積み上げていくことも大切ですが、結局参加者の方々が見るのは「そのイベントが楽しそうかどうか」だと思います。そのうえでまずは企画者がワクワクしながら考えられるか、という観点もとても大切で、その議論の土台を作ってくれるのがムーンショットの考え方であると感じました。

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第一回目の報告会では、こうした大きな発散に基づいたアイデアを複数提案しました。この時点で抜け落ちていたヒアリングや現状分析は、以降の流れで行っています。

2〜3ヶ月目:
認識や意識をすり合わせることの大切さ

(1)心理的なハードルを下げる

第一回報告会までの反省を踏まえて、報告会後に全体的なチーム体制の見直しをしました。実行したことは大きく3つあります。

  • これまで一人が担当していたミーティングのファシリテーションを順番に担当することにしました。一人ひとりのコミット量をあげて全員が同じ土俵に立つことで、発言しやすくするためです。
  • 企画・調査チームという分け方をやめて、タスクごとに役割分担をする形を取りました。これにより、情報共有やコミュニケーションの分断がなくなりました。
  • メンバーが互いに1on1を行い、日々感じている本音や雑談も含めてざっくばらんに話をしながら、距離感を詰めていきました。

これらの工夫を取り入れたことで、心理的なハードルがより低くなり、議論が進めやすくなりました。「心理的安全性」という言葉は社内でもよく使われている言葉です。この期間には、人の心理まで考慮した体制の設計をすることで、チームが適切に回るのだということを学びました。

(2)これまでの運営チームと一緒に道を確かめる

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チーム体制が改善されていくなかでいくつかアイデアは見えてきたのですが、それでも企画として頼りなさを感じながら進めている状況でした。これを打開したのが、先輩方が蓄積してきた過去のプレゼンテーション資料です。

その中で先輩の佐藤さんから学んだのが「与件の整理」です。これは、オリエンテーションでクライアントから得た情報を、改めてチームで整理・言語化し、再度クライアントと目指したいものについて認識をすり合わせるという作業です(今回のプロジェクトにおいては、これまでのUI Crunch運営メンバーがリブランディングの提案者であり、クライアントのような立ち位置になっています)。

それまでは、目指したいものをチーム内でのみ意思決定していたため、本当にそれが確かなのかが明確に判断できず、ぼんやりとしていた状況になっていました。また、ここがぼんやりとしたまま進むと、運営メンバーとチームの判断軸がずれてしまうので、提案をしても適切なフィードバックが得られなくなってしまいます。

改めて運営メンバーも含めたすり合わせを行うことで、より迷いなく進めることができるようになりました。

(3)言葉の定義を綿密にすり合わせる

議論が活発になってきたところ、「お互いに同じことを話しているはずなのにすれ違う」という現象が起こるようになりました。いったん認識をすり合わせたはずのことも、お互いに理解が異なっていて、議論の巻戻りが起こることもありました。
そこで、議論で登場する言葉やコンセプト周りで定義した言葉も含めて言語化する作業をしました。言葉の意味はもちろん、各メンバーが抱いているイメージなど感覚値も含めてすり合わせ、工数をかけてドキュメント化しました。

「やっぱりそれって違くない?」「うちら合ってないよね?」といった提案はなかなか心の労力を使うかと思いますが、DeNAでは責任を持って発言していく姿勢とそれを受け止める姿勢が求められます。

こうした地道なすり合わせを重ねることで、第2回、第3回目の報告会では良い反応をいただくことができ、フィードバックも密度の高いものとなりました。

3.メンバーがしていた工夫

上記にはこれまでの運営で機転となった取組を抜粋しましたが、それ以外にもメンバー各人がプロジェクトをより強く推進しようと取り組んだ工夫もたくさんあります。下記にメンバーそれぞれに聞いた工夫ポイントをまとめてみました。

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チームづくりの工夫 by Fujimoto

  • 「まずは一通りやってみてから考える」という先輩の教えを参考に、最適なチームのあり方を手探りで模索する。
  • 根拠が浅かったとしても自分なりの仮説をもってチームを動かしてみる。
  • メンバーから上がった声は素直に受け取る。
  • 批判を恐れずにチーム体制を変更する。

記録/議事録の工夫 by Ohashi

  • 盲目的に記録するのではなく画面を共有しながら議事録をとり、全員が議論を耳と目で追える様にする。
  • 議論の内容を「決定事項」と「ネクストアクション」の大きく二つの項目に分けてまとめ、最後に必ず共有する。
  • ネクストアクションが宙に浮かないよう、誰がボールを持つのかまで決めて議論を終える。

ビジュアライズの工夫 by Narizuka

  • ロゴをリニューアル(Fix)した段階でロゴやVIを作る時に意識したことやデザインコンセプトを言語化してまとめた。
  • 簡潔にコンセプトをまとめ短い資料にしておくことでチーム全体でロゴに込められた想いを共有することができ、デザインに関わっていないメンバーも把握することができる。
  • また、UI Crunchは今後も続いていくイベントなので制作したロゴが自分の手から離れてもそのコンセプトを継承したまま使用してもらいやすくなることを狙った。

プレゼンテーションの工夫 by Yokoyama

  • 企画の楽しさが伝わる声色や表情を意識した。リモートということもありしっかりカメラを見て「あなたに」伝える。
  • 原稿通りではなく、自分の内から出てきたナチュラルな言葉を使う。言葉を投げかけるような意識を持つ。
  • 今回はプレゼン後に全員がワンチームになるので、最後にメンバー全員を巻き込むようなメッセージを伝えて巻き込みを図る(一緒にやりたいと思ってもらう)。

工夫は四者四様で、中期以降にお互いの個性がわかり始めてからこのように自然と役割分担ができるようになりました。得意としていることだと自ずと工夫点も見えてくるので、こうした適材適所のアサインは非常に大切であると学びました。

おわりに

結果として、プレゼンテーション時からさらに内容がブラッシュアップされて、自分たちでも見ていて「良い!楽しい!」と思えるイベントを実施することができました。リブランディングとはいえ、数百人規模のイベントを0→1で考えられたことが、新卒一発目の業務としてとても貴重な経験となりました。

こうして学びを振り返ってみると、初歩的なことも多いですが、大きな成長をできたと感じられます。チームとしての動き方、課題と解決方法など、何か価値を生み出すにあたっての土台を実体験を伴って理解することができました。
企画をするうえでもちろん企画力が大切ですが、つまるところコミュニケーション力がチームの力を最大させる近道だと感じた取り組みでした。

UI Crunchについて詳しく知りたい方はぜひ下記も覗いてみてください!