世界最大級広告賞 「Cannes Lions 2018」
参加レポート

こんにちは ! 17新卒で入社しました、デザイン戦略部デザイナーの松岡です。 6月18日から6月22日に開催された 「カンヌライオンズ 2018」 へ参加してきました。 みなさんに現地での様子をお伝えしたいと思います!

カンヌライオンズとは

カンヌライオンズ ( 正式名称:カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル )」 とは、世界三大広告賞のひとつで、毎年6月にフランスのカンヌで開催されます。

この時期は世界中からトップクリエイティブを見るために人が集まるため、開催前日も街は多くの人で賑わっていました。

カンヌってどんな場所?

開催日前日には現地に到着していたので会場周辺を事前にウォッチング。

会場周辺は前日も各ブースの設営準備をする人や世界中から集まった多国籍な人たちが街を行き交っていました。すぐ近くにはビーチがありリゾート地な雰囲気です。

少し道をはいると旧市街が広がり、人も少なく素朴でのどかな雰囲気。アパートやカジュアルなレストランが連なった古い街並みは海沿いの華やかなイメージとはまた違って素敵ですね!

この時期のフランスは日が長く、夜の22時くらいまで昼間のように明るい!

さっそく会場へ

待ちに待ったフェスティバル当日です!初日には日本語の会場案内ツアーもあって初めて参加する私でも会場やフェスティバルのことについて理解することができました。

受付を済ませて「カンヌライオンズトートバック」を受け取ります。みなさんが持っている青いバッグのことです。ハンドブックやチラシ、お水をいただきました ! 日本の6月より日照っていて暑いので助かります。

ハンドブックゲット

メイン会場「Palais」内の様子

壁には各企業によるセミナーのポスターがびっしり

「Palais」会場内のステージ「Lumière Theatre」

2番目に大きい会場「Palais Ⅱ」

「Palais Ⅱ」会場内のステージ「Healthcare Insights Stage」

カンヌといえば ! ! なレッドカーペット ! 授賞式後の様子です

 

そのほかも、会場の外やビーチではたくさんの企業がブースを出展していました!

 

エントリー作品をチェック

メイン会場「Palais」の地下1階には作品展示コーナーがあり、世界中からエントリーされた約32,000点もの作品を見ることができます。

数十台あるPCモニターでは今年のエントリー作品の動画ショートリストはもちろん、過去の作品も部門ごとに視聴することができます。また、投影モニターもあり一日中作品動画が流れています。私もセミナーの合間はずっと地下で今年のエントリー作品や過去の受賞作品を見ていました!

 

26の部門と9つのトラック

カンヌライオンズには26の部門があり、受賞作品は毎年部門ごとに決定されます。
また、各部門は[Reach] [Communication] [Craft] [Experience] [Innovation] [Impact] [Good] [Entertainment] [Health] の9つのトラックに分類され、現地ではトラックごとのセミナーも準備されています。部門の詳細は公式サイトで確認できます。

毎日各ブースで開かれるセミナー

各トラック10つのセミナーが準備され、会場の各ブースで毎日開催されます。公式アプリでは、全てのセミナーのスケジュールをチェックすることができ、気になるものをブックマークして管理するのに便利です。
私が現地で参加した[Innovation] と [Experience] のセミナーを紹介したいと思います。

Androids, AI, and the Future of Human Creativity | Dentsu Inc. [Innovation]

電通主催のセミナー。大阪大学教授の石黒浩さん、電通のクリエイティブテクノロジストの米澤香子さん、元『WIRED』日本版編集長でもあるエディターの若林恵さん、黒柳徹子さんのアンドロイドロボット「totto」が登壇していました。
AIやロボットがさらに進化していき人間に代わって労働をすることは、私たちの仕事を脅かすことであるとたびたびテーマに挙げられます。そのように技術革新が進み、費やす時間の割合が仕事メインだったものが教育メインへと移っていく中で、「今後の人間の役割」について話し合うセミナーでした。

では、人間だけができることとは何でしょうか。何のために私たちは働くのでしょうか。 人間の仕事を「合理 — 非合理」「ルーティーン — 無制限」の二軸でマッピングしたときに、AIが最も力を発揮するのが「合理的」かつ「ルーティーン」の領域、「非合理」かつ「無制限」の領域はまだ人間にしかできません。生産性はAIやロボットに任せ、人間性の再構築をするべきで、再構築のためにクリエイティブが必要!

The Power of Moving Experience | HELO [Experience]

HELO社のPhoebe Smithさんが、プロダクションデザイナーでアカデミー賞ノミネート経験のあるKK Barrettさん(作品『Her』『 Lost in Translation』『Being John Malkovich』など)と、カンヌライオンズ受賞経験もあるCM・映画監督であるJeff Tremaineさん(作品『Jackass』『Bad Grandpa』など)と「最も魅力的な体験を創るために必要なこと」について過去の事例を挙げながら話し合うセミナーでした。

Drive-Out Cinema | X-Finity

こちらは、アメリカの通信会社X-Finityが、インターネット回線速度の速さをPRするために、人気映画『The Fate of the Furious(ワイルド・スピード)』とコラボして実施したドッキリプロモーション企画についてです。 映画の中でも出てくるカーレースを忠実に再現されていて、最後には「X-Finityのギガスピードインターネットはこんなにはやいんです」というコピーで締めくくられています。メイング映像はこちら 

#MayhemSale | Allstate

アメリカの保険会社のAllstateが行った、SNSの近況投稿で留守があらわになってしまい空き巣被害が増加していることを警告する企画です。 Twitterでフットボール観戦に行くことをツイートしたカップルの家に忍び込み、そこで盗んだ家電を激安でネット販売するというドッキリ施策内容でした。通販番組のような動画を投稿するとすぐにネット上で話題となり、#MayhemSaleはわずか4時間で7,800万回以上のインプレッションがあり、試合中にはワールドトレンド1位となりました。2015年にカンヌライオンズでブロンズ賞を受賞しています。

Nufonia Must Fall | Blackmagic Design

KK Barrettさんがパフォーマンス監督を務めた『Nufonia Must Fall』。映像機器メーカーのBlackmagic Designが発表したライブプロダクションです。自社製品であるBlackmagic Pocket Cinema CameraとATEM Production Studio 4Kを使用して撮影・ライブスイッチングした作品となっています。 20のミニチュアセット、ライブのパペット操作を駆使しストーリーがステージで展開します。演劇やパペットショー、コンサート、映画などの要素全てがこの作品に詰め込まれています。

これらの3つの事例に共通しているのは「リアルな体験」でした。インターネットが身近になった今だからこそ、ユーザーのリアルな生活の中でどんな影響を与えられるのかということに重点を置いて施策を打ち、制作に取り組みたいと感じます。

授賞式

授賞式は毎日夜19時からレッドカーペットをのぼった先にある、最も大きい「Lumière Theatre」という会場で行われます。

受賞作品は部門ごとに決定され、最も高く評価されたものが「グランプリ」に選ばれます。次いで、「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」という順で賞が授与されます。
以下で5つのトラック [Health] [Communication] [Experience] [Craft] [Entertainment] から受賞作品の一部を、部門別で紹介したいと思います!

レッドカーペットをのぼり、授賞式に向かう様子

 

HEALTH

ヘルス&ウェルネス部門

Dot Mini. The First Smart Media Device for the Visually Impaired. [ドイツ]

— Brand: Dot — Entrant: Serviceplan

「Dot Mini」は視覚障害者向けのデジタルデバイスで、電子書籍やWebサイトなどあらゆるデジタルテキストを読み込んで点字に変換し、凸凹を上下に動かすことで点字を作り出す。 点字は、正確な意味は文脈に依存しており、1つの単語に対して4つの連続した規則に従わなければならないため翻訳するのはすごく難しいものです。科学や音楽のような先進的な分野では、新しいルールブックが全くありません。 「Dot Mini」のAI / 機械学習に基づく革新的な点字翻訳エンジンは、文脈を理解し、効率的に2等級点字に変換することができます。

Hemoji [ブラジル]

— Brand: Santa Casa da Misericórdia — Entrant: Y&R

献血をSNSの拡散という機能を使って集めるキャンペーン。すごいのは実施金額がゼロということ。「A」「B」「O」「AB」の血液型を示すアルファベット絵文字に「+」または「-」を追加することで自分の血液型を表現し、TwitterやInstagramのアカウント名に記載することを促す。SNS上で血液型を共有することで、献血者として識別することができる。血液型の登録、該当者の検索、一致する人に連絡といった一連の作業がSNS上で完結できるというのはシンプルで画期的!

Corazón - Give Your Heart - [アメリカ]

— Brand: Montefiore — Entrant: JOHN X HANNES

アメリカでは臓器移植を待っている患者は11万5000人いると言われている。ドナー登録を呼びかけるため、医療センターのMontefioreは、キャンペーンの一環として48分のショートフィルム「Corazon」を制作、トライベッカ映画祭に出展。 スマホを胸に当てると心拍数が測れるアプリや、計測結果と連動した屋外広告なども制作。Webサイトはこちら。 他人の気持ちを変えることは難しいことです。特にドナー登録に踏み切るというのは簡単に決断できないことだと思います。 患者のストーリーに基づいたフィルムで臓器提供者の感情に訴えかけることで、ドナー登録することの意味を人々に伝えることを可能にしました。またオンラインで簡単にドナー登録できる仕組み作りをすることで、その感情の変化をしっかりとアクションにつなぐことができたんだと感じます。

COMMUNICATION

プリント&パブリッシング部門

Hot & Spicy [中国]

— Brand: KFC
— Entrant: Ogilvy

唐辛子などのスパイスで味付けされたKFCの「Hot & Spicy」が、実際に炎が燃える様子と色や質感が似ていることからこのビジュアルが表現されました。一口で舌が焼けるように辛い様子も想像できます。何よりこのインパクト!目に止まりますし実際に他部門でも多く受賞していました。 他のデザインもあります。3種類ともぜひ見て欲しいです!

ラジオ&オーディオ部門

Soccer Song for Change [南アフリカ]

— Brand: AB InBev — Entrant: Ogilvy

南アフリカの虐待率は世界の5倍。南アフリカでは飲んで女性に暴力を振るう男性が多く、その事件はサッカーの試合後に急増するそう。 ビール会社のカーリングブラックは、アルコールを「言い訳」にして家庭内暴力をする事実を変えるためにこのプロジェクトを実施しました。 現地で有名なサッカーチームの応援歌を試合開始前に女性たちにコーラスしてもらい、盛り上がってきたところで一部替え歌にし#NoExcuse(「言い訳」は通用しない)というメッセージを伝えた。迫力のある歌声が胸に強く刺さります。

デザイン部門

OBSESSION FOR SMOOTHNESS [日本]

— Brand: Double A Int'l Network — Entrant: AOI Pro. inc.

OK Goの新曲『Obseession』のリリースに合わせ、コピー用紙などを扱うタイの企業Double AとのコラボMVを作成。 ビデオ用に開発されたシステムで567台のプリンターを同時に印刷し、世界初「紙のプロジェクションマッピング」を実現しました。 世界130ヶ国に向けて自分たちの紙がいかになめらかであるのかを宣伝したいという企業のこだわりを、こういった形で表現しているのは、ただビジュアルがかっこいいだけでなく広告として機能していてとってもクール!!

アウトドア部門

Follow The Arches [カナダ]

— Brand: McDonald's — Entrant: Cossette

おなじみマクドナルドのロゴ「M(ゴールデンアーチ)」の一部を切り取り、近くのマクドナルドの位置をドライバーに示す屋外広告。ブランドの色とロゴの一部のみを使用した直感的なデザインアイデアは世界中のどの都市にも適応可能なシンプルで統一された道案内となりました。

The Daily Show Presents: The Donald J. Trump Presidential Twitter Library [アメリカ]

— Brand: Comedy Central — Entrant: Comedy Central

コメディ番組「The Daily Show」が企画。トランプ大統領のTwitterコメントをあたかも美術品のように額装して展覧会を開催。会場にも多くの人が訪れ話題となりました。トランプ氏がツイートした瞬間にリアルタイムで鳴るアラームなど、関連コンテンツも展示されました。

モバイル部門

Corruption Detector [ブラジル]

— Brand: Reclame Aqui — Entrant: Grey Brasil

政治家の汚職が蔓延しているブラジル。市民の前でいい顔をしていても、実はブラック政治家かもしれません。 消費者からクレームを受ける専門サイトReclame Aquiが無料の「汚職探知アプリ」を開発。何百にものぼる政治家たちの過去の不正発覚記事などを網羅したデータベースを顔認証に紐づけています。 テレビ、論文、インターネット、屋外、さらには候補者本人の顔にカメラを向けると、その政治家の過去不正の事実を警告します。

EXPERIENCE

ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門

Today @ Apple [アメリカ]

— Brand: Apple — Entrant: Apple

体験型プログラムやワークショップを世界中のApple Storeで毎日開催するプロジェクト。技術の発展や店舗とコミュニティの結びつきの強化といった目的で実施されました。写真、音楽、コーディングなどを追求することができます。また、全てのセッションで最新のApple製品とテクノロジーを使用しています。これは参加したい...! 店舗が提供する価値を「製品を販売する」以上の「人々の生活を豊かにする」といったユーザー体験レベルで実現していると感じます。

クリエイティブeコマース部門

X BOX Design Lab Originals: The Fanchise Model [イギリス]

— Brand: Microsoft — Entrant: McCANN

X BOX Design Labではコントローラーを好きなカラーのボタンやボディにカスタマイズすることができます。しかし値段が高いことが課題でした。 そこで客を「起業家」見立てるというアイデアでビジネスモデルを変更。ゲーマーは1クリックで簡単に自分のデザインを作成することができ、その自作モデルを購入する人が増えれば増えるほど、小遣いがもらえるという仕組みです。利益を目的にゲーマーは起業家のように行動し始めました。一番稼いだ人で約12万円、平均でも1万円くらいの収入になり、コントローラー全体の売上は350%にも増加。ゲーマーが自作モデルをアピールしようとするのでサービスのPRにもなったそう。

CRAFT

インダストリークラフト部門

First Steps [アメリカ]

— Brand: SC Johnson — Entrant: Ogilvy

靴クリームブランドKIWIのシンプルなプリント広告。モハメド・アリのボクシングシューズに焦点を当て、「もし、この靴が話すことができたなら、とまらず話し続けるだろう」というコピーで始まり、そのシューズがアリと歩んできた人生が書かれています。オーディオストーリーやポッドキャストでは、プリント広告とリンクされており別の角度でこのストーリーを語ります。コピーの内容はこちら

Break the speed [モロッコ]

— Brand: Nestle
— Entrant: J. Walter Thompson

「Have a break」はKitKatのグローバルタグラインであり、速く忙しい毎日の中でKitKat食べて休憩しようというメッセージ。 ノンストップで過ぎるスピード感を表した横に伸びるラインの中で、KitKatを食べている人が「休憩する」時間をとる様子を緩急つけることで表現しています。

デジタルクラフト部門

Aeronaut VR [アメリカ]

— Brand: William Patrick Corgan — Entrant: isobar

William Patrick Corganの曲「Aeronaut」のVRミュージックビデオ。VRアーティストのDanny Bittman がGoogleのTilt BrushとBlocksを使って背景を表現し、106台のカメラを使って撮影することで作成されたピアノを弾くWilliam Patrick Corgaのホログラムを投影。ViacomとIsobarの共同チームによって制作されました。

フィルムクラフト部門

HOPE [スペイン]

— Brand: Red Cross — Entrant: BLUR Films

銃弾に傷ついた少女を病院に一刻も早く送り届けようとする父親の話。間接的に攻撃の被害者になってしまう少女に焦点を当てています。戦争の起こっている地域では毎日のように病院や医療従事者が攻撃されており、それによって医者や医療センターを失うだけでなく、治療手段がなくなり致命傷に陥ってしまう人が多く存在することを伝えています。 実際に戦場で撮影された映像は緊張感があり、そのドラマ演出に引き込まれます。結末にはこれが本当に地球で起こっていることだと思うと言葉にできない切ない気持ちになります。

ENTERTAINMENT

エンターテインメント部門

Evert_45 [オランダ]

— Brand: KPN — Entrant: N=5

年々戦争体験者は少なくなり、若い世代にその悲惨さを実感を持って伝えることができなくなってきています。そこで通信会社のKPNは、13歳の男の子を起用して1945年のリアルな暮らしをYouTubeやInstagramで伝えるというキャンペーンを行いました。キャンペーンの内容は、第二次大戦中の1945年4月、Evertというオランダ人少年が離れたお兄さんに会いたいと探しに出かけた旅の実話を再現したものとなっています。SNSも連動したこのキャンペーンは「もし今の時代に戦争があったら」と戦争の悲惨さをより身近でリアルに想像させます。戦没者追悼記念日にリリースされ、通信会社の「伝える」という役割を実践した表現であると感じました。

エンターテインメントフォーミュージック部門

Jay-Z "Smile" [アメリカ]

— Brand: Roc Nation — Entrant: Smuggler

HIPHOPアーティストJAY-Zの「SMILE」のMV。母親であるGloria Carterのセクシャルマイノリティについて歌ったもの。歌詞の中で自分を隠して生きることの辛さを表現しています。MVの最後にはGloria Carter本人が登場し、「Living in the shadows」という詩を朗読しています。

Welcome Home [アメリカ]

— Brand: Apple HomePod — Entrant: TBWA\Media Arts Lab

映画監督Spike Jonzeによる約4分のフィルム。 Anderson Paakの音楽に合わせて、空間が変化して行く展開になっています。主演はイギリスのシンガソングライターFKA Twigs。不思議な映像に引き込まれる! HomePodはどんな家庭でも臨場感のある音楽体験を提供できるというのを、グラフィカルな空間と心地の良い音楽で表現されています。映像はCGのように見えて実は大掛かりなセットで撮影されていることがメイキングフィルム からもわかります。

さいごに

全日程に参加することはできなかったものの、会場にいるあいだは、世界のトップクリエイティブを自分の目で見て肌で感じることができ、毎日興奮がさめやらないといった状態でした。
やはり作品の中でも特に印象に残っているのは、社会問題を捉えてクリエイティブで伝えることを実現しているもの、広告として機能しインパクトを与えているものばかりでした。
感じて終わりにしないためにも、今度は自分がサービスを通して世の中にインパクトを届けていきたいと思います!