CINRAさん主催のDesign Camp in Denmarkに参加してきました。
前編はデザインカンファレンス「Design Matters」についてレポートします。
Design Mattersとは
毎年コペンハーゲンで開催されている「デザイナーによる、デザイナーのための」デザインカンファレンスです。
世界中からデザイナーが集まり、デジタルデザインに関する動向を共有するだけでなく、インスピレーションを与える場として発展してきました。
今年のwebサイトはこちら。https://designmatters.io/
2019年の今年のメインビジュアルはweb1.0を彷彿とさせるデザインです。
主催者のJulieさん曰く、
「毎年実験的にさまざまな表現にチャレンジしており、綺麗なだけではなく心を動かしたいと考えています。今年のwebサイトは見ての通り、尖ったトーンで作っているため賛否両論ですが、良いデザインと悪いデザイン、それ以上に大事だと思うのは、このデザインによってコミュニケーションが生まれることです。」
とのことでした。 インターネット感があって私はかなり好きです。
会場の雰囲気
それでは早速カンファレンス当日の会場の雰囲気を紹介します!
先ほど紹介したwebサイトの世界が広がったような会場になっていました。
ブランコや卓球台なども設置されており、セッションを聞くことに疲れたときの息抜きにぴったり。
ノベルティもとてもかわいい。
美味しそうなパンやジュースがずらり!本場デンマークのデニッシュもありました。
一日中コーヒー飲み放題で、朝食はパンが食べ放題でした。お昼にはサンドイッチなどが振舞われ、夜になるとビールを飲むこともできます。有意義なスピーチも聞けるうえ、美味しい食べ物を常に食べられるので大満足でした!
テーマについて
毎年Design Mattersではテーマがあり、そのテーマに沿って登壇者が話していきます。今年のテーマは下記の3つになります。
1:Minimal Tech
機能としてミニマルであることを目指すテーマです。
現代の人々はスクリーンを見る時間が非常に長くなっており、中毒症・睡眠障害・自尊心の低下など、さまざまな問題があります。
これらを解決するために、中毒性を持たなかったり、通知が少なく静かであったり、ストレスを与えず、必要最小限の技術で人の成長を助けるデザインについて話します。
2:Activism + Design
デザイナーが社会をより良くするためどう貢献できるか考えるテーマです。
「ユーザー中心」の設計から「社会中心」の設計にデザインのアプローチを変える必要性について考えます。
3:Are we on the same page?
コラボレーションによるデザインの変化についてのテーマです。
FigmaやAbstractなど、ツールによってデザインの手法も変化してきています。デザイナー1人が100%支配するデザインではなく、コラボレーション型のデザインの今後について考えます。
登壇内容
様々な分野のデザイナーが登壇された中、私たちが聞いたセッションをいくつかご紹介できればと思います。
Duolingo
Senior Product Designer: Beth Chasse
テーマ: Minimal Tech
ゲーム感覚で学べる言語学習アプリ、Duolingoのシニアプロダクトデザイナー・Beth Chasseさんのお話。
気軽に言語を学びたいカジュアル派、真剣に学びたいシリアス派、二種類の矛盾するユーザーに対して一つのアプリでどう応えたのか、という内容でした。
他社ゲームアプリの
- 経路が複数選べる
- レベルの概念がある
という点に着目し、Duolingoが学ぶ道筋が一本道だったところを改善。スキルをクリアする横軸の移動だけでなく、スキルのレベルを高める縦軸の経路を追加することで、カジュアル派を萎縮させることなくシリアス派の求める難しいコンテンツも提供できるよう変更したそうです。
後半は「Duo」というフクロウのキャラクターを中心としたブランド刷新について。Duoはロゴではなくマスコットとして扱い、パーソナリティを与えることでブランド力を上げたそうです。
YouTube session: https://www.youtube.com/watch?v=HPf-mRHfcEg&t=510s
Behance by Adobe
Jeannie Huang
Theme: Minimal Tech
BehanceのJeannie Huangさんは、「クリエイティブな仕事のために、意図的に退屈な時間を取り入れよう」と提案していました。
「退屈な時間」を日常に取り入れる3つの手法は以下です。
- 毎日何もしない5分間をスケジュールに組み込むこと
- 週に一度シングルタスクしかしない日をつくること
- 待つときに、同じように待つ人たちに共感するようにすること
多くのデジタルプロダクトは、ドーパミンを生み出してユーザーを熱中させる仕組みを採用しており、デザイナーは中毒性のあるデザインを求められがちです。
この際にデザイナー自身が社会的責任に気づき、デザインを通して「ユーザーに本当に価値を届けられているのか、日常のノイズになっていないか?」と自問してみてほしい。そして、デザイナー自身もこのドーパミンサイクルを断ち切るために、意図的に「毎日5分何もしない時間を作ること」を実践し、日頃からノイズに気づき、取り払う練習をすることで、ユーザーに届ける価値を考える際に役立てられる、と話していました。
「私たちが作っているのは価値かノイズか?」
実際にBehanceでは無駄にレコメンドしたり、長く滞在させたりするようなデザインに意図的にしていないそうです。滞在時間や離脱率などの数値だけに着目するのではなく、本質的にユーザーが何を求めて、何を得たいのか、その部分の解決につながるプロダクトを作るようにしているそうです。
YouTube session: https://www.youtube.com/watch?v=3C2gJZ6obE8&t=7s
Slack
Senior Product writer: Andrew Schmidt
Theme: Are we on the same page?
Slackのシニアプロダクトライター・Andrew SchmidtさんからはUIライティングについて。
- スレッド機能追加
- ログインアラートメールの文言変更
- キャンセルのキャンセルボタン問題
などを通して、 UIライティングの注意点と、コンテンツファーストの手法を用いたライティングのプロセスを解説していました。
ボタンのラベル一つでも、アプリの手触り感に影響するもの。ライティングとデザインを上手くコラボレーションして、プロダクトをより良いものにしていきたいですね。
YouTube session: https://www.youtube.com/watch?v=TUM72K5Ze88&t=1064s
figma
Product Designer: Jenny Wen
Thema: Are we on the same page?
デザインツール界の新星Figma。複数人でデザインできるコラボレーション機能などで2019年は特に話題に上がっていましたよね。今回はFigmaのプロダクトデザイナーであるJenny Wenさんから「オープンデザイン」について。
- デザインの過程をオープンにすることで、より多くの人がデザイン作成に参加する。批判を恐れず、デザインに対してのコミュニケーションができる場を作ることがとても大事
- デザインとは共通の言語であって、チーム内でも業種に関わらずこの共通言語を使ってプロダクトを作ると良いのではないか
といった内容のセッションでした。
チームで他の分野の方々がデザインの過程に積極的に参加することで、デザイナーには思いつかなかった別の視点でのソリューションがプロダクトをよりよくできるかもしれません。「デザイナーだけがデザインをする。」この考え方はもう古いのかもしれませんね。
YouTube session: https://youtu.be/WzMoUFhByOE
サイドイベント
セッションのほかに、実際に手を動かしてものづくりをするサイドイベントが設けられていました。
今回私たちはデニッシュづくりのワークショップに参加してきました。
サイドイベントを通してデンマークの文化について触れられる機会があるのは、とても素敵なプログラム設計だなと感じました。
まとめ
最新のデザインの動向や考え方を掴めるイベントで、非常に刺激的でした。カンファレンスのテーマとなった3項目は単なるデザインのトレンドではなく、これからのサービスデザインに必要な要素なので真摯に考え続けていきたいですね。
来年1月に日本のShibuya CastでDesign Mattersのポップアップ開催が決定したそうです。気になる方は是非チェックしてみてください。
以上レポートでした!