なぜ、SXSWからサービスが誕生するのか? イノベーションの芽を育てる 5つのヒント 【SXSW 2018レポート】
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なぜ、SXSWからサービスが誕生するのか?
イノベーションの芽を育てる 5つのヒント
【SXSW 2018レポート】

様々な新規サービス誕生のきっかけになったSXSW

2018年3月9日〜16日まで、7日間に渡ってアメリカ合衆国で行われた大規模な音楽・映画・インタラクティブのフェスティバル『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト )』に、DeNA デザイン戦略部のメンバー数名で視察してきました。

SXSWでイノベーションが起きる要因はどういったところにあるのでしょうか。各企業や来場者はどの様な目的を持って、またどの様なアプローチの場としてSXSWに参加しているのでしょうか。
今回の視察のなかで学んだ"イノベーションの芽を育てるヒント"についてご紹介します。これから新規サービスを作ろうと考えている方、またSXSWに参加してみたいと思っている方に読んでいただけたら幸いです。


目次:

00 はじめに SXSWとは?
01 熱量の高い仲間の発掘
02 多様性に富む顧客のリアルな声
03 専門性を活かした協業力
04 未完成ならではの可能性
05 ブランド・アイデンティティ
まとめ


はじめに SXSWとはどんなイベント?

1987年にはじまったSXSWは、アメリカ合衆国テキサス州オースティンで行われる大規模なフェスティバルです。
(SXSW2018 公式サイト https://www.sxsw.com/

世界95カ国から7万人以上が集まり、最近では日本企業の出展や参加者も増えています。2007年にTwitterがSXSWをきっかけに世界的に広がり、その後、様々なスタートアップ企業が集まるイベントになりました。その後、FoursquareやPinterest、Airbnbなど現在に到るまでに様々なサービスがSXSWから世界に発信されました。

展示会場の様子

オースティンのダウンタウン(中心街)の街全体が会場になっており、「Trade Show」が行われるメイン会場のAustin Convention Centerのビルを中心に、JW Marriottなどの隣接したホテルやレストランが展示のため解放されています。
コンベンションやパネルディスカッション ・音楽・映画など、コンテンツの総数は2000を超えます。セッションが多数ある上、展示会場もそれぞれ離れているので、スケジュールをしっかり立て、効率よく回る必要があります。
ダウンタウンの端から端までは30分~1時間ほどで歩いて回ることも可能ですが、各所にレンタサイクル、自転車で牽引できるリヤカーやセグウェイ、バス、路面電車やubarなども充実しているので、乗り物を使うと会場から会場への移動がスムーズです。

Austin Convention Center内に設置されているメイン会場「Trade Show」

メイン会場「Trade Show」では、展示ブースが国ごとに分かれており、日本、アメリカ、メキシコ、スペイン、フランス、イギリス、イタリア、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、中国、韓国……など、多数の国が出展しています。
日本企業の設置スペースは会場全体の約8分1くらいを占め、JETRO、電通、博報堂アイ・スタジオ、BANDAI NAMCO、YAMAHA、NTT、PARCO、TV Asahi…… など、大手企業からispaceやKonelなどのスタートアップまで、大小多数様々なブースが出展されていて、多くの人で賑わっていました。

01 熱量の高い仲間の発掘

「熱量の高い」仲間探しは最重要課題?!

サービスを拡大していく中で、仲間を見つける事は重大なミッションになってきます。
SXSWは、世界中から集まったイノベーター、スタートアップ、投資家&投資会社、最先端テクノロジー企業、クリエイターなどとのあらゆる出会いの場所でもあり、更なる新しいビジネスチャンスが生まれる場所でもあります。

また、実際にプロダクトを開発している担当者と話をする事ができるので、プロダクトに対する熱い想いを聞く事ができたり、最先端テクノロジーの専門知識を聞くこともできたりします。来場者もそういったサービスや技術に関心の深い人が多く集まっているので、もしプロジェクトに高い関心を持った人材に出会うことができたら、一緒に働くチャンスです。
プロジェクトに対する興味関心が高い人材と活性化した議論を展開することができたら、 より角度の高い施策 をアウトプットできる可能性が高くなり、良質なプロダクトに仕上がっていくことになると思います。

会場内にはリクルート会社や、企業の海外への移転先をサポートする会社も出展しており、まさに企業とユーザ、企業と企業とを結ぶ場として最適なイベントなのだと感じました。

(YAMAHA x 博報堂アイ・スタジオ 「Duet with YOO」 AI https://live.yamaha.com/yoo/ )
博報堂アイ・スタジオ 他の作品など https://www.i-studio.co.jp/news/2018/03/sxsw-tradeshow.html

02 多様性に富む顧客のリアルな声

顧客の理解が深まることで見えてくるニーズ

開発者も会場スタッフとして現場に出て来場者にプロダクトの説明をしたり、顧客の「生」の声を聞くことで、より良質で具体的なUX設計にチューニングしていける為、改善点やニーズを知ることができたのではないかと思いました。

また、もし世界を視野に入れたサービスを考えているならSXSWは最初にプロトタイピングを披露するのに適していると感じました。
日本人には当たり前な感覚も、外国人から見たらとても刺激的で初めて体験するものがあるかもしれません。そういった様々な国の人からの 世界からの評価 に気づくことで、更なる新しいアイデアが生まれる可能性があります。

(Todai To Texas x 電通 学生の研究力とデザインのコラボレーション Lunavity IoT機器https://lunavity.com/
Todai To Texas 他の作品 http://todaitotexas.com/
電通 他の作品 https://dentsu-ho.com/articles/5849 )

03 専門性を活かした協業力

企業間の強みをいかした「協業」だからこそ生まれる新たな表現

「協業」する企業の中でも、特に注目したのが『Todai To Texas』です。

産学競創推進本部. “Todai to Texas Project”. 東京大学.https://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/activity/venture/sxsw.html

学生ならではの「柔軟で自由なアイデア」をテクノロジーの力を駆使して形にし、デザイン部分はその専門性に特化した企業に依頼することで、効率的かつ最適化されたクオリティを目指すことができます。もし自分のアイデアを見つけることが出来たら研究生にもチャンスがあります。ビジョンに賛同する「企業と組む」ことの相乗効果から 新しい体験 を作り上げることができるかもしれません。

04 未完成ならではの可能性

プロダクトの開発方法は多種多様

SXSWの展示内容にはすでにリリースしている「完成されたプロダクト」もありましたが、開発中のプロトタイピングも数多く見受けられました。
更に「センサーで認知する技術」や「振動が発生する技術」などの、技術アイデアをベースに、今はまだ「試作品」のプロダクトもありました。その技術をどう生かしていくか、ある程度のビジョンや構想はあるものの、こういった技術をどのようなシーンでどう活かしていくのかは、来場者と話していく中でヒントをえられることもあります。
実際、そのヒントを元にブラッシュアップしていく方法を取り入れている企業もあり、様々な開発スタイルがあることを知りました。

サービスのコンセプトが最初から定まっているものと、「技術やアイデア自体が面白い」という発想からスタートしているもの、どちらも完成してなくてOKなんです。どんなサービスに生かしていけるかはこれから考え改修していくという自由なスタンスで、それらにチャレンジできる場所がSXSWであり、そこに イノベーションの芽 が隠れているのだと感じました。

(SONYブース https://www.sony.co.jp/brand/event/sxsw/wowstudio/A(i)R Hockey エーアール エアーホッケー)

05 ブランド・アイデンティティ

ブランディングを確立し世界への拡散を目指して

ブランディングは企業やプロダクトの印象を左右する重要なマーケティング戦略の1つです。
サービスそのもののクリエイティブは勿論ですが、ブースの組み立て方、ノベルティ、スタッフの対応、語彙力、全てが ブランディング であり総合的な企業の評価に繋がると思います。そういったプロダクト以外のUX設計にも力を入れアピールする重要性を感じました。

また、自社ブランドの認知度を広める活動の場としてもSXSWは効果的です。日本企業のSONY、Panasonic、電通、YAMAHAなども最新のテクノロジー×エンターテイメントを取り込み、新しいプロダクトの開発にチャレンジしていることを発表していました。
このように有名な大手企業は新しい技術開発や取り組みを世界に披露する場として、またスタートアップの企業はプロダクトを通して、世界に「その名」を知ってもらう場として、 SXSWから世界に発信 することができます。

まとめ

以上に上げた、 熱量の高い仲間の発掘・多様性に富む顧客のリアルな声・専門性を活かした協業力・未完成ならではの可能性・ブランド・アイデンティティ などが「イノベーションの芽を育てる」ことに繋がっていくのだと学びました。

もし今あなたが、新規サービスを考えているようでしたら、自分の信じたアイデアをSXSWで試してみてはいかがでしょうか。
勇気を持って世界へアウトプットすることでその一歩は、大きな成功をつかむ「瞬間」になるかもしれません。また、気になる新規サービスを見つけることができたら仲間になれる「チャンス」でもあります。SXSWは、様々な人やサービスの可能性に出会うことができるイベントです。
2019年のSXSWも、どのような新しいサービスが発表されるか注目です!